2018.10.02
今回は、敷地と道路に関するさまざまな規定のなかで、うっかり見落とししかねない「角敷地の建築制限」、いわゆる「隅切り(すみきり)」の規定についてお話しします。
「隅切り(すみきり)」は、道路の交差部などにおける見通しの確保や、車両や人の通行上の安全を目的としたものです。一般的に条件がよいとされる角地の土地や住宅の購入を検討するときには、この規定も頭の片隅に入れておきましょう。
・角敷地における建築制限の概要
・対象となる敷地を購入するときの注意点
上記2点についてお伝えします。
▼角地の建築制限は自治体によって異なる
一定の幅員未満の道路が交わる角に接する敷地では、一辺を2mとする二等辺三角形の部分を空地としなければならないことが、多くの自治体で定められています。道路の交差部だけでなく、一つの道路が屈曲する角に接する敷地の場合でも同様です。
この一定の幅員は「接する道路がいずれも6m未満のとき」とする自治体が多いものの、2つの道路の幅員の「合計が10m未満のとき」、あるいは「合計が12m未満のとき」などとするところもあります。
これが、たとえば「いずれも6m未満のとき」とする規定なら、どちらかが6m以上であれば該当しないことになります。
この空地のことを「隅切り(すみ切り)」といい、この部分には建築物はもちろんのこと、交通の妨げになるような門や塀など工作物の築造も禁止されています。この規定を「角敷地の建築制限」といいます。
また、2つの道路の交差部または1つの道路の屈曲部の内角(隅角)が120度以上のときには、すみ切りの必要がありません。
一方で、具体的な道路幅員の基準などを定めないまま、2つの道路が交わる角敷地では「任意の大きさのすみ切りを設けること」といった、強制力のない指導や、推奨規定に留めている自治体もあるようです。
自治体ごとの「建築基準条例」などによって内容が異なるため、一般向けの建築関連書籍などでは「隅切り」について触れられていないことも多く、角地の購入を検討するときのチェックポイントとして見落としやすい制限ですから、十分に注意しましょう。
ちなみに、角地における「建ぺい率の緩和規定(10%の割増)」については、適切な隅切りを設けることが条件となっている自治体もあります。
▼隅切り部分の整備や処分はどうするのか
すみ切り部分をどうするのかについての規定も、自治体によって異なります。道路状に整備することを義務付けている自治体がある一方で、空地にすることだけしか求めていない自治体も少なくありません。
また、接する道路が公道の場合の買い取り制度や寄附制度、舗装整備をする場合の助成制度、補助制度などについても自治体によってまちまちです。固定資産税などの課税免除については、何らかの規定を設けている自治体が多いです。
▼土地売買における、隅切り部分の取り扱いは?
自治体の規定に沿った隅切りをまだしていない土地の場合には、その「隅切り予定地」部分も一体の土地として売買対象に含まれることが多いです。
逆に、既に隅切りをしている土地の場合はどうなるのでしょうか。
隅切り部分の買い取り制度や寄附制度がある自治体でも、一般的に強制ではなく、それに応じるかどうかは任意です。また、隅切り部分と敷地部分を、分筆登記するのかどうかもケースバイケースです。
隅切り部分を分筆してすでに自治体の名義になっていれば、当然ながらそれは売買対象に含まれませんが、分筆せずに宅地と一体の土地となっているとき、あるいは分筆したものの宅地と同一名義のままになっているときには、隅切り部分も売買対象に含まれます。
▼建築確認では、隅切り部分も敷地の一部
隅切り部分が売買対象面積に含まれるときには、何だか損をしたような気分になるかもしれませんが、建築確認において建蔽率や容積率の計算をする際の敷地面積には、この隅切り部分の面積を算入することができます。
したがって、隅切り部分が売買対象面積に含まれるときの売買金額の算定では、この部分を完全にゼロとみなすのではなく、ある程度の評価を求められることも出来ます。
もちろん、隅切り部分を分筆して自治体に買い取ってもらったり寄附したりすれば、敷地面積には含まれず建築確認の対象にもならないことになりますので注意が必要です。
いずれにしても、角地の土地や住宅の購入、角地での建築などを検討するときには、事前にそれぞれの自治体における規定の内容をしっかりと確認しておくことが大切です。
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