2018.10.22
築20年以内か、築20年超えかは住宅ローン減税が利用できるかどうかの判断になりますが、木造戸建ての場合は、新耐震か旧耐震かでも大きく判断が異なります。
旧耐震戸建ての取引は注意が必要です。
普通の仲介会社では扱いきれないので、今回の記事を踏まえて、リフォームや耐震に強い仲介会社を選ぶことが大切です。
〇前提
・旧耐震案件は改修工事が前提ということ
・建て替えの可能性も視野に入れる
<解説>
・旧耐震案件は改修工事が前提ということ
旧耐震案件に買ったままの状態で住むというのは現実的な判断と言えません。
売主によるリフォーム済みの物件でも、耐震や劣化改善など必要な対策が行われていないケースが多いです。
旧耐震案件はほぼ土地値の取引になります。
もちろん使える部分は積極的に活用したいのですが、リフォーム費用を安くしたいという考えには合わない取引です。
ある程度まとまったリフォームを実施する前提で、リフォーム予算に余裕がないと成立しにくい取引とも言えます。
予算が限られる場合は、旧耐震戸建ては検討から外した方が良いかもしれません。
・建て替えの可能性も視野に入れる
お金をかければどんな状態の物件でも、安心して暮らせるレベルに直せるのが木造住宅の特徴です。
ただ、新築とリフォームを比較すると、リフォームの方が割高になる傾向があります。
建物の状況を調べて、改修費用が高額になる場合は、建て替えした方が良いという判断もあり得ます。
中古物件を購入して思いっきりリフォームというのも良いのですが、リフォームを前提にする方は建て替えという選択肢も視野に入れた方が良いです。
〇内見前に確認したいこと
・新築時の設計図書などの資料が残っているかどうか
・リフォーム履歴(特に増築の有無)
・雨漏れなど劣化が発生していないか
・耐震改修済みかどうか
<解説>
・新築時の設計図書などの資料が残っているかどうか
新築時の平面図には筋交いという構造材の位置が記載されています。
耐震診断は非破壊検査になるので、図面がない場合は筋交いの特定が困難になります。
図面がない場合の耐震診断では、筋交いがないものとして評価されるので、著しく評価が下がってしまいます。
ただ、旧耐震の場合は、そもそも設計上の強さが不足しているので、図面の有無だけが大きな影響というわけではありません。(旧耐震案件は図面がないケースが多いです)
新築時の設計図書は後から作成することが難しいので、設計図書ありの物件はプラスポイントと判断します。
・リフォーム履歴
旧耐震の案件はこれまでリフォームを実施しているケースが多いです。
リフォーム履歴は正確に把握したいです。
【リフォーム履歴】
・いつ実施したか?
・なぜ実施したか?
・リフォームの内容
・リフォームを実施した事業者
特に注意したいのが増築です。
増築された方法によっては、性能評価がまったく行えない状況も考えられます。(木造住宅に鉄骨を使用した、中2階を作ったなど)
こういった物件はそもそも検討に値しません。
事前に増築の有無を確認しましょう。
・雨漏れなど劣化が発生していないか
ある程度年数が経過すると建物は劣化します。
雨漏れの有無は建築に詳しくなくても確認できますので、水に関する事故がこれまで発生していないか確認しましょう。
・耐震改修済みかどうか
これまでに耐震診断や耐震改修を実施したことがあるか確認します。(実施されているケースは少ないと思います)
耐震改修済みの場合は、どのような工事を行ったのか、設計書や施工履歴などの文書が残っているか確認しましょう。
履歴が確認できない場合、過去に実施された耐震改修工事は、その工事を行った事業者しか評価できません。
少し前に悪徳リフォーム事業者の問題もあり、耐震基準適合証明書を発行できるレベルの改修工事が行われていないことも考えられます。
いずれにせよ耐震改修済みの物件は要注意です。
旧耐震の物件は何かしら問題があることが前提です。
ただ、既存の物件を活かすには、これまでの住まわれ方に関する情報が不可欠です。
あまりに情報が不足している物件は検討から外した方が良いかもしれません。
〇内見時に確認したいこと
・決定的な劣化事象が存在するか
・改修費用の目安
<解説>
・決定的な劣化事象が存在するか
旧耐震物件は、改修工事を行うことが前提です。
外壁・基礎のヒビ割れや多少の雨漏れがあったとしても直せば問題ありません。
ただ、リフォームで直すにはお金がかかる劣化事象が見られる場合は、建て替えを検討した方が現実的です。
この決定的な劣化事象は、建築に明るくないと判断しにくいです。
旧耐震(もしくは古い物件でリフォームを前提)の場合は、リフォーム会社と相談して、可能であれば内見に同席してもらった方が話が早いです。
【決定的な事象】
・大規模な雨漏れ(特に屋根が原因と思われるもの)
・家屋の大幅な傾き
・ボロボロの基礎
・改修費用の目安
リフォーム会社が同席していることが前提ですが、内見時にはこの物件を購入して、一般レベルの安全性能を確保するには、どれくらいのリフォーム費用がかかりそうか、ざっくりとした費用感を確認したいところです。
買うかどうかわからない物件に、その都度正確なリフォーム見積りを求めるのは現実的ではないので、あくまで相談レベルの判断でも良いので、費用の目安を教えてもらいましょう。
〇不動産売買契約前に実施したいこと
・インスペクション(耐震診断と瑕疵保険検査)
・リフォーム見積り(リフォーム事業者の選定)
<解説>
・インスペクション(耐震診断と瑕疵保険検査)
旧耐震案件の場合は、不動産売買契約前のインスペクションを強く推奨します。
改修費用が不明瞭なままでは、買主が著しく不利だからです。(不動産売買契約を締結してしまうと簡単には解除できません)
宅建業法で定義されたインスペクションは建物状況調査と言いますが、建物状況調査は主に劣化に関する調査になるので、きちんと耐震も含めて調査を行う必要があります。
・リフォーム見積り(リフォーム事業者の選定)
改修費用は重要な物件選定材料です。
想定外にお金がかかる物件をそのまま取引するべきではありません。
ただ、不動産売買契約前に、細かなリフォーム仕様まで打ち合わせを行うことは現実的ではありません。
なので、不動産売買契約前は、悪い部分の改修費用を中心に情報を提供してもらい、その他リフォームについては、概算金額を提示してもらう程度が現実的です。
提示されたリフォーム費用を踏まえて、物件を取得してリフォームを行うか、建て替えを行うか、購入を見合わせるかの判断を行います。
※以下の記載はリフォームを行う場合に該当します。(建て替えの場合は別途仲介会社と相談が必要になります)
〇不動産売買契約にあたって確認しておくべきこと
・住宅ローン減税を適用する方法を決める
・住宅ローン減税を適用するために必要な方法の具体的なスケジュールを確認する
<解説>
・住宅ローン減税を適用する方法を決める
・住宅ローン減税を適用するために必要な方法の具体的なスケジュールを確認する
下記は住宅ローン減税を適用するための方法となります。
旧耐震の場合はリフォーム工事も大規模になりがちなので、方法3が標準となります。
方法1 所有権移転前に耐震基準適合証明書を取得する(現実的ではありません)
方法2 所有権移転前に瑕疵保険検査基準に合格し、既存住宅売買瑕疵保険に加入する(こちらも現実的ではありません)
方法3 所有権移転後、居住開始までに耐震改修工事を実施して耐震基準適合証明書を取得する
不動産売買契約から所有権移転、引き渡し後のリフォームまで、契約後にやらなければならない事項は多いです。
不動産売買契約時には後工程をリストアップし、対応漏れがないように確認が必要です。
また、所有権移転日までにやらなければならないこともありますので、それぞれやるべきことのスケジュールも予め確認しておきます。
「細かいことは引き渡し後に」不動産業界は買主の都合は引き渡し後に回す悪い風習がありますが、所有権移転日までにやっておかなければならないことがありますし、期日が迫ると慌てて判断しなければならない状況も考えられるため、早めに全体像を掴むようにしましょう。
※仲介会社は不動産売買契約の事務手続きで手がいっぱいになりがちですので、契約直近というよりは、買付申込あたりから、取引の全体像について相談するようにしましょう。
旧耐震の場合はリフォームが大規模になりがちなので、リフォームの工程についても細かく確認しましょう。
いつまでにリフォームの仕様を決定しなければならないのか、どのタイミングでリフォーム工事請負契約を締結するのか、リフォーム会社と打ち合わせを重ねて必要事項を詰めていきます。
リフォームの打ち合わせが遅れると、リフォームの着工が遅れ、住み始める時期がずれてしまいます。あまり悠長に検討する余裕があるわけではないので、スケジュールを立てて着々と手続きを進めていきましょう。
〇まとめ
旧耐震物件の取引はリフォームが前提です。
物件検討だけでなく、リフォームについてもたくさんのことを判断し、決定する必要があります。
後回しになると判断を急がされることになりますので、なるべくスケジュール進行が緩やかな段階で、早めにリフォームの打ち合わせを進めておくことが必要となります。
冒頭に記載しましたが、旧耐震の取引は、リフォームや住宅性能に詳しい仲介会社が担当でないと、必要なプロセスが抜けてしまう恐れがあります。
買主の自己責任を極力排除することが、安心・安全な取引には重要な判断基準です。
アジャストの加藤でした。
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