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中古戸建てのインスペクションは改修工事を前提に

2018.11.11

改正宅建業法の施行から半年。
中古取引におけるインスペクションも徐々に当たり前のプロセスになりつつあります。
改正宅建業法におけるインスペクションは建物状況調査と言います。
その名のとおり、建物の状況を調べるものです。
一般の方にはあまり理解していただけないことがあります。
それは、建物(特に戸建て)は調べるだけではあまり意味がない、ということです。

耐震を例に挙げます。
家屋の耐震性を調べるには耐震診断を行います。耐震診断を実施すると、その家屋の耐震性が数値化され報告されます。
当然のことながら、耐震診断を実施しただけでは、安全とは言えません。診断をもとに改修工事を行って初めて安全性を確保できるのです。
耐震については多くの方が「自分の家は大丈夫だろう」もしくは「自分の家は古いからダメだろう」のどちらかの認識で、どちらにも共通するのがお金をかけて改修工事をすることが前提になっていないことです。
前者の場合は「まさか工事が必要とは思わなかった」、後者の場合は「お金をかけてまで改修する価値があるのかどうか」というような理由で必要な工事が実施されないことが多いです。
耐震診断は有償であることが多いので、結果を知るだけではもったいない。あまり意味がないのでは?という感想を持ってしまいます。

建物状況調査も同じです。
確かに建物の状態が不明瞭なまま取引するより遥かにマシなのですが、仮に雨漏れが指摘されたとして、「雨漏れがあります」と報告されただけでは意味がないですよね。どのように改修するのか?どれくらい費用がかかるのか?具体的な改善策についての情報こそが大切なのです。

「状態を調べて結果を見てから検討する」ことが目的でとりあえずインスペクションするのと「改修工事を行うので個所・方法・費用を明らかにする」ことが目的でインスペクションをするのでは、インスペクションの内容は同じなのですが、得られる結果が大きく変わります。
改修工事を前提とするということは、それだけ予算を見ておく、ということです。そして、結果によって臨機応変に検討するケースは、必要な予算が確保されていないケースが多いです。
タイトルで「中古戸建てのインスペクションは改修工事を前提に」と書いたのはこのことです。住宅購入予算の考え方が本質です。

改修工事を前提とすると、物件の選び方も変わります。
古い家ほど劣化している可能性が高くなり、改修費用も高くなります。もし気に入った物件が相応に年数が経過している物件だとしたら、改修工事予算を多めに確保して、予算内に収まるかどうかの確認が必要になります。
調査結果が悪ければその物件の購入を見合わせればよいのですが、建物状況調査も有償であることが多いので、やたら滅多に調査を行うこともできません。
必然的に、お金がかかる調査の前に少しでも情報を得ようと動くことになります。行き当たりばったりだと事前調査がおろそかになるので、望まない結果になりがちです。

<判断が間違っている例>

×新耐震だから耐震性は大丈夫
→2000年5月以前は耐震改修が必要と判定される可能性が高いです。築20年以上で住宅ローン減税を利用したい方は、耐震改修を前提にしないと実現が難しいです。

×リフォーム済みだから大丈夫
→一般に実施されているリフォームは、設備の交換やクロスの貼り換えなど、見た目や快適さの改善を目的としたものです。売主が売却のために実施するリフォームも内装が中心です。中古住宅購入時に必要なリフォームは住宅性能の向上が目的です。耐震改修・外壁塗装・屋根塗装・バルコニー防水改善などの必要な工事の履歴が確認できない場合は、改修工事が必要と判断される可能性が高くなります。

×築浅だから大丈夫
→以前記事にしましたが、我が家は築10年で外壁の日当たりのよい部分のコーキングが破断しています。流石に築3年~5年で劣化が指摘されるというのは言い過ぎなのですが、あまり築浅であることを過信しない方が良いです。(ただ、築浅の場合は、改修工事が必要でも比較的安価で済むことが多いです)

×買取再販物件だから大丈夫
→事業者による買取再販物件は注意が必要です。買取再販は、可能な限り安く仕入れて、可能な限り安くリフォームを実施して、利益を確保する事業モデルだからです。買取再販事業者がすべて悪いとは言いませんが、本質は同じで、特に性能面で必要以上にリフォームする合理的な理由がないのが事実です。
買取再販物件の場合は、既存住宅売買瑕疵保険への加入を必須とした方が良いでしょう。

中古戸建を検討する場合は、リフォーム費用を改修工事費用とその他リフォームに区分して予算を検討する必要があります。
予算を多めに取っておいて結果的に状態が良くて使わなかった、というのは良いのですが、思った以上に改修費用がかかることが判明した、では取引が成立しません。

中古住宅に潜むリスクとは、必要な改修費用の金額です。安心安全な取引のためにも、インスペクションが欠かせないのですが、目的を間違えないようにしたいものです。

アジャストの加藤でした。
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