2019.04.12
改正宅建業法が施行されて1年。昨年の今頃はインスペクションについてかなり盛り上がっていたのですが残念ながら良くない方向で落ち着きつつあるようです。
改正宅建業法でインスペクションの関する情報提供について義務化されました。
具体的には、
1)媒介契約時にインスペクションあっせんの有無を表示する(有の場合は実際にあっせんを行う)
2)重要事項説明書に既存住宅状況調査(インスペクション)結果報告書の有無を表示(有の場合は内容を説明する)
3)売買契約書に売主・買主双方が確認した事項の有無を表示となります。
インスペクションを誰が行うべきか?という議論に結論が出ないまま1年が経過しています。
買主の立場で見ると売主が売却を決めた際にインスペクションを実施していただければそのインスペクション結果報告書を購入判断材料として利用できるためとても検討しやすい物件と言えます。
問題なのは、売主が能動的にインスペクションを実施する理由が薄いということです。インスペクションを実施しているケースがまだまだ少ないのでインスペクションを実施していなくても売買は成立しますし、費用をかけてインスペクションを実施したとしても高く売れるわけでも早く売れるわけでもありません。多少の値下げで面倒な手続きをやらなくても良いならその方がメリットあると考えてしまっても仕方がない状況です。
ただ、買主側でインスペクションを実施しようとすると、スケジュールがかなり厳しくなります。
住宅購入判断材料として活用するには、不動産売買契約前のインスペクションが必要になりますが、インスペクションの結果を待つ間に他の人に物件が売れてしまうというリスクを負います。
先に述べた改正宅建業法で見ても、売買契約前にはインスペクションを実施しておくべきという制度設計なのですが、どうも実際の不動産市場とのギャップを感じます。
また、インスペクションの目的も正しく伝わっていないケースが多いように思えます。
中古物件なので、検査を行うと何かしらの不具合が見つかります。
インスペクションは、現在時点で不具合の有無を判断するのではなく、少し長い目で見て改修が必要かどうかを判断するプロセスです。
「検査で不適合が出なかった!ラッキー!」ではなく、10年、15年とこれから長く住む上で、今のうちに手を入れておいた方が良い箇所がないかを判断することが大切です。
実際に住宅購入を行う場合、住宅ローンという低金利のローンを組むことができます。金融機関にもよりますが、ある程度のリフォーム費用を住宅ローンとして含めることができる商品もあります。
ただ、住宅を取得してしまうと、リフォームのための資金を借りるのは少し難しくなります。少なくとも住宅ローンレベルの金利でリフォームローンを借りることはできません。
悪くなったらその時考えよう、では遠くない将来にリフォーム資金で頭を悩ませることも想像できるので、少なくとも住宅購入時にまとめてできる改修工事がないかの確認くらいは行っておいた方が良いと思います。
インスペクションの目的は改修工事です。検査だけでは何も解決できません。問題点を確認し、必要な対策を講じることが大切です。
※既存住宅状況調査で不適合がない物件は、既存住宅売買瑕疵保険に加入できる可能性が高いです。既存住宅売買瑕疵保険は住宅のトラブルに備える消費者保護の制度です。
あわせて検討してください。
アジャストの加藤でした。
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